【コラム】


スタパ齋藤

電波運ってあるんですか?



■電波運ってあるんですか?

 俺の部屋は電波的環境があまりよくないらしい。コードレスホンはノイジーだし、ラジオもイマイチ入らないし、時々凶悪なトラック無線の音が無通電のスピーカーから再生されたりする。

 特に携帯電話が使いづらい部屋だ。例えば、かなり前に使っていたTU-KAの携帯電話は、部屋の外だとアンテナマークが3本立つのに、部屋に入ると0本もしくは圏外となる。TU-KAの電話に着信があっても、受話器を耳に当てたら切れる、なんてこともしょっちゅうだった。

パルディオ312S
パルディオ312Sとデータカード。'97年4月のPIAFSデータ通信サービス開始に先だって発売された32K対応端末はコレだけだった
 また、NTTパーソナルのPHSことパルディオ312Sもそうで、室内だと完全なる圏外。が、外に出るとアンテナマークが2~3本オッ立つのであった。なので、窓際にホームアンテナ(窓際に届いたNTTパーソナルのPHSの電波を強めて室内に放射するような装置/無線でいうところのリピーターアンテナに近い存在)を設置して、室内でもPHSできるようにしたのだが、それでも非常に不安定で、通話できたり突然切れたり。

 じゃあPHSするのはお外として、室内ではホームステーション(NTTパーソナルのPHSを一般電話回線のデジタルコードレスホンとして使う装置)を使って、パルディオ312Sをデジタルコードレスホンにして楽しもう、ということにした。が、これもなんつーか電波が不安定なのか、安定性に大きな波がある。フツーに使えたり、異常に不安定だったり。原因不明の奇妙な動作をする。なんつーかイマイチ良くない感じである。
 マトモに通話できるのは、NTT DoCoMoのデジタル携帯電話と、一般電話回線だけ。あー俺はなんて電波運のないコンピュータ野郎(もとBCL野郎)なんだ~とやるせない日々を送っていた。

 そこへ、知る人ぞ知る女子大生漫画家の餅月あんこ先生がやってきて、おもむろにDDIポケットのPHSを取り出し、おもむろに通話し、おもむろに「にゃ~スタパさんPHSの電波が弱まってるとか言ってたけどDDIだったら入るじゃないですくわ~。にゃ~ムトーハップ~大島椿油~」などとおっしゃった。



■強いぞDDIの電波!!

 何だってホントかよちょっとそのPHSよこせよ貸せよ使わせろよと、餅月先生からPHSを取り上げて使ってみると、ほほぅなるほどしっかり使える。アンテナマークも2本。そういえば近所にDDIのアンテナ立ってたし、DDIってNTTパーソナルとかアステルとかと違って、基地局からの電波強いんだったなァと思った瞬間、DDIのPHSが欲しくなった。

 俺の物欲的気配を察してか、餅月先生はホラこのスケルトンモデル超オシャレでしょカワイイでしょ便利っていうか1円で買ったっていうかスタパさんも買った方がいいですよなどと俺を煽ったので、その場ではフッそんな子供だましの電話いらねえよナメちゃいけねえぜ子猫ちゃんなどと虚勢を張ったが、餅月先生がお帰りになった直後電気屋へ走って速攻でDDIのPHSを物色した。

東芝Carrots
'97年11月に発売された東芝のCarrots最新型DL-S27P。約73g、連続待受約800時間
 物色中、頭の中をいろーんなコトがよぎった。例えば、NTTパーソナルのPHSを持ってんのにまたPHS買うのかとか、ホントかよ本体価格800円とか10円とか1,980円かよとか、でもNTTパーソナルのPHSってホームアンテナとかホームステーション使えるのがおもしろいんだよね~とか、そうかーDDIは基本的に電波強いからホームアンテナとかねえしホームステーションみたいなのもねえゼとか、でもαPHSに対応してるDDIの端末って何かと融通が利くって評判だよネとか、今更PHSなんか買わないでデジタル携帯電話買おうかなとか、つまりそういうモヤモヤである。
 でもなんか、餅月先生はかなり便利そうに使っていた。それにやっぱりPHSは音がいい。ハーフレートに移行しまくりのNTT DoCoMoなんかに比べたら、CDと短波ラジオほども音質が違う。というわけで、俺はDDIのPHSを買った。

 買ったのは、Carrotsという東芝の端末と、PHS-M302Sというサンヨーの端末と、PHS-M302という(PHS-M302Sを子機として使える)留守番機能付き電話機だ。
 モヤモヤしてたクセに2台もPHSを買ってしまったのは、餅月先生をビビらせるためではなく、電気屋の店頭で都合良く気を失ってしまったからである。
 ていうかホントは、CarrotsをPHS兼デジタルコードレスホンとして使い、PHS-M302をその親機兼留守番電話として使いたかったためで、PHS-M302SはPHS-M302とセットじゃないと売ってなかったからというわけだ。



■さっそく俺的新電話システムを!!

 2台もPHSを買った俺は、帰宅した瞬間速攻でNTTパーソナルのPHSを解約した。前述のように、室内だとイマイチ不安定だったし、最近はきゃらメールも使ってなかったし、PHSによるモバイルもあまりやらなくなってしまったからだ。

 次に、2台(2回線)の新DDI端末の一方、PHS-M302Sの解約も試みた。最近では、いわゆる“シバリのPHS”というのが多くある。例えば1円などの激安PHSを買った場合、最低限6カ月は解約できないというような契約。端末を激安で売るかわりに、基本料金や通話料金で稼ごうというキャリア側の思惑を遠回しで具体化しているシステムである。で、試しに解約できるのかどうか確認してみたら、あらま不思議、買ったその日に解約できちゃいました(でも締め日がまだ先だったので、数日はPHSとして利用できてしまった)。

 さあスッキリした。部屋の中では何かと不都合が多かったNTTパーソナルとは縁が切れたし、室内でも使えるPHSことDDIの端末が手に入ったし、これをデジタルコードレスホンとして使えるようになった。

サンヨーPHS-M302
サンヨーのPHS-M302。'97年11月発売。子機は6台まで接続可能。“テ・ブ・ラ・コードるす デジタル”の愛称から分かるように、親機本体だけでも“てぶら”で通話できるのがウリ。留守録はDSPに約15分記録可
 結果的に俺が手に入れた俺的新電話システムは、まず一般電話回線に接続されたサンヨーのPHS-M302(通称テ・ブ・ラ・コードるす デジタル)。これは、電話機らしからぬカタチをした電話で、ハンズフリーフォンとしても留守番電話としても使える。この電話機の子機はPHS-M302Sで、これはデジタルコードレスホンの子機としてもPHSとしても使えるのだが、前述のように速攻で解約してしまった(白ロム化してしまった)ので、PHS-M302Sの子機としてだけ機能する。
 さらにこの電話機(PHS-M302S)に、Carrotsを子機登録した。つまりCarrotsは、PHSとしても一般電話回線用デジタルコードレスホンとしても使えるようになった。

 それから、解約したパルディオ312Sだが、これはPHSとしては使えなくなったものの、まだホームステーションが生きている。要するにこれも一般回線用デジタルコードレスホンとして、まだ使えるのである。

 そこで実験。パルディオ312S+ホームステーション(NTT組)と、PHS-M302+PHS-M302S(DDI組)の、どちらの一般電話回線用デジタルコードレスホンの方が使いモノになるか。両方の端末を持って、部屋から徐々に離れてみた。すると、目に見えてパルディオ312Sの方のアンテナマークが減っていく。NTT組不利か!? さらに、離れては通話、離れては通話、という感じで、実験続行。結果、DDI組の勝ち。DDI組だと部屋から30メートル以上離れた(しかも障害物多数アリの)場所で使えたが、NTT組だと20メートルくらい離れたらもう通話できなくなった。ふぅん、なるほど。
 が、音はNTT組の方が良い。NTT組は、かすかにジーというノイズがある程度である。DDI組はサーというわりと目立つ(というか耳障りな)ノイズが始終あった。なんでかしら。ちなみに、PHSとして使った場合は、両者にそれほど大きな差はなかった。



■やっぱデジタルコードレスホンはいい

 結局、俺のPHS環境はCarrotsで落ち着いた。東芝の端末というのは初めて使ったが、(ハンズフリーホン用のイヤホンジャックがない点以外)問題なく、使い勝手が良い。それから、デジタル・テ・ブ・ラ・コードるすことPHS-M302もナイスで、今時の留守番電話としては申し分ない機能がある。操作も簡単だし、出先から伝言を聞いたり、転送設定をしたりなど、約1カ月ほど使っているが全体的に快適。また、デジタルコードレスホンということで、通話内容を傍受される心配もほぼ完全になく、精神的衛生的にも良い。

 デジタル・テ・ブ・ラ・コードるすについて敢えて言えば、親機のみで売って欲しいということ。αPHS対応の電話機なので、数々のDDIポケット系PHSを子機登録できるのだ。だから、親機だけで販売すれば、NTTパーソナルのホームステーション的な存在として多くの人が欲しがると思うのだ。まあ専用の子機であるPHS-M302Sだと、親機の各種機能をリモートコントロールできるから便利なのだが……。

 そんな感じで、けっこうキマったフィーリングで電話ライフを送っている俺だが、やっぱりPHSはPHSだ。俺の部屋からPHSとして通話できたり、町中を歩きつつ高音質な通話ができたりしても、部屋にいるときはいつも一般電話回線で通話し、出かけるときはいつもクルマな俺には、PHSっちゅーモンはいまひとつ利用価値が少ない。

 クルマで走ってると使えないし、ちょっと郊外に出ると圏外だし、これをメインの携帯用の電話にするにはちょっと……という感じなのである。デジタルコードレスホンとして利用できるのはいいのだが、PHSとしてはあんまし利用しない俺なのであった。つまり俺みたいな人には携帯電話が便利なのだ。高速で移動し、人口が比較的まばらな地区に住み、いろんな場所で確実に通話するなら、やはりドデカくてパワフルな基地局を使っている携帯電話がフィットする。

 あー、なんか、電話というモノのおもしろさだけに惹かれて2台も白ロム端末を作ってしまった。う~、なんか不毛な俺。最初からもっと着実に考えればよかったなーと、ほんのちょっぴり反省した今回の購入行動であった。

□NTTパーソナルホームページ
http://www.nttphs.co.jp/
□PIAFSホームページ
http://www.32k.nttphs.co.jp/
□DDIポケット電話ホームページ
http://www.j-plaza.or.jp/ddi-pocket/

[Text by スタパ齋藤]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp